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 ☆ 相続税の仕組み
   相続税や贈与税は、税務署では資産課税部門という独立したセクションで事務処理を行います。所得税や法人税のような経常的な税金ではなく、単発的である、つまり多くの納税者にとって一生に一度しか関わらない税金であるとの特殊性の故です。特殊な税金である相続税の仕組みを簡明に説明するのもなかなか困難ですが、被相続人が遺した一定額以上の財産に対して財産を相続した相続人に課せられる税金である、というのが端的な説明になります。

相続税の計算のしくみ.bmp

   

☆ 節税対策の難しさ
   相続税を節税の観点から考えた時に、節税対策を講じる事を非常に困難ならしめる点があります。それが何かお分かりになるでしょうか。
    相続税は、人の死亡というある意味偶発的な出来事によって発生するシステムを採用しています。そのため、いつ起こるかが不明である、人の死亡という未確定で遠い将来に向けての対策を練る必要がある点がネックとなるのです。今から5年後に相続が確実に発生する、という事が現段階で解かっていれば相続税の対策は実に立て易い訳ですが、現実はそうはなっていません。90歳近い方がこれから10年間存命される事も必ずしも珍しい事ではないでしょうし、一方で60歳台前半の現役バリバリの社長が急死する事態もあり得ない事ではありません。
    相続税は、被相続人が一代に亘って稼得した所得の清算という側面を持っており、節税対策は絡まった糸を解きほぐすような丹念な作業が必要です。決して一朝一夕に節税対策を講じられるものでは有りません。しかも、相続税制も頻繁に改正されていきます。昨日までは完璧な筈だった節税策が、たった数行の法律改正で水泡に帰してしまう例も少なくありません。5年後の相続を見越して周到に練った筈の節税策が、相続発生がずっと先に延びた事によって何の意味も持たなくなるという事態も、またその逆の事態も十分に起こり得る事なのです。


☆ 争族にしないために
   税金以前の問題として、遺産の円滑な分割を実行する事が非常に大切な事です。被相続人が完璧な遺言書を遺してくれておればいいかもしれませんが、なかなかそうした例は見られません。遺言書が残っていたとしても、遺留分を侵害する内容となっておればそこに係争の芽が潜んでいます。
    一次相続は何とかうまく乗り切っても二次相続で大きな問題が発生する、というパターンも少なくありません。一次相続とは、父親が亡くなった際の相続の事です。配偶者たる母親がそこそこの判断力を維持している事が前提ですが、いかに高齢とはいえやはり母親の重しが十分に効きます。その母親が亡くなった場合の二次相続は、重しがとれた反動が一気にでるケースがままあります。更に、相続人同士だけの問題ではなくなるのが、相続人の配偶者や子までもが口を挟んでくる時です。こうなると、もう感情論ですから振り上げた拳をおろす所がありません。最悪の場合は兄弟の断絶です。せっかく遺された財産によって相続人が幸福になるどころか不幸になってしまうのでは、天上の被相続人も浮かばれません。
    生前中に死後の事を話し合う事をタブー視する風潮も未だありますが、やはり生前からこうした問題について真剣に考えておくべきではないでしょうか。

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