事業者にとって、自社（者）の関与税理士の選択は、事業発展の帰趨を決する上での大きなポイントとなります。記帳や決算の相談は勿論ですが、日常の事業活動において関与税理士からアドバイスをもらう機会は少なくない筈です。経営の岐路に立った時、もし税理士が間違った判断をあなたにしたら、と考えてみてください。会社が被る損害は相当なものとなってしまうでしょう。貴重な顧問料を支払ってアドバイスを受ける相手です。間違いのないアドバイザーを選ぶ必要があります。税理士選択のポイントについてまとめてみました。 

 １　性格が合うか

　やはり人間と人間のお付き合いです。全くそりの合わない人と付き合うのは大変な苦痛です。税理士の腕が立つ立たない以前の問題として、全く性格が合わない場合にまで無理にお付き合いする事は決してお薦めしません。 

２　年齢条件

　　どんな業種もそうですが、やはり経験に裏打ちされたスキルというものは無視できません。税理士もそれなりの（失敗も含めた）経験の積み重ねで腕を磨いていきます。この道数十年の百戦錬磨の税理士と資格を取ったばかりで実務経験も殆どない税理士とでは、顧客の安心感もかなり違うでしょう。

   但し、豊かな経験は、一方では（自戒の意味も込めて）過去の成功体験にこだわる硬直化にも繋がります。また、経験の浅さは反面で貪欲な知識の吸収というインセンティブを生み出すメリットもないとは言えません。ベテランも、加齢とともに、特にＩＴ分野への適応力が低下する事態も避け難いものと言えるでしょう。足して２で割るといういかにも日本的な発想になってしまいますが、ベストの選択肢としては中堅どころという結論になるかと思います。

  もうひとつ、顧客との年齢差も考慮する必要があるでしょう。極端に年が違う経営者と税理士が円滑なコミュニケーションを取る事も難しいように思われます。経営者が税理士にアドバイスを求める機会が多いことに鑑みると、税理士がやや年長である組み合わせがベストであるように思われます。

 ３　国税ＯＢと生え抜き

　　税理士は、その資格取得経歴で大きく３種類に分かれます。国税ＯＢ・税理士試験合格者・大学院修了試験免除者です。このうち、大学院修了試験免除は数年前に制度として廃止されましたが、ここでの分け方としては生え抜きという事になります。

  国税ＯＢであろうが生え抜きであろうが、然るべき規範意識をもって税理士業務を行っており、どちらがいい悪いといった区別はできません。ただ、得意分野や思考経路にはどうしても埋めきれない差が生じます。

  国税ＯＢの強みは、自身がかつては調査をする立場にあり課税庁の内部事情にも精通している点です。税法に詳細な規定がなく多分に執行現場の判断で左右される部分、例えばどこまでが必要経費として認容されるか、といった内容は、課税庁の判断基準を熟知した国税ＯＢに一日の長があります。これに対して生え抜きは、一般的に理論面で優れていると言われています。税法の解釈を理詰めで説明できる能力の高さは生え抜きの特徴です。短所は、それぞれの長所の裏返しと言えるでしょう。

４　専門分野

　　医者には内科・外科…といった区別があるのが常識ですが、○○専門と謳っている税理士はごく少数派です。しかし、実際には、同じ税理士といっても精通している分野・苦手な分野は当然あります。顧客の求めるものと税理士の専門分野のフィールドが異なれば、やはりいい結果は生み出しません。あなたが税理士の門戸を叩いた場合、自分が求める答えをきちんと税理士が出してくれるかを見極める事は当然として、その税理士の専門分野も聞いてみるといいでしょう。それが見事にマッチングすれば理想的なコンビネーションが生まれます。